当店のカレーの原点は北海道のスープカレーにあり

当店のカレーの始まりは、「DiningBAR Hidden Lounge 麻布十番」で2年前に夜のメニューの一つとして提供したのが始まりでした。、その後「麻布十番薬膳カレー」としてランチ営業も始めました。度々「なぜBARでこんな本格的なカレーを始めたんですか?」と聞かれます。今回は当店のカレーのルーツを少し詳しく書きたいと思います。

北海道生まれスープカレー育ち

僕にとってのカレーの原点は「北海道のスープカレー」です。このカレーとの出会いがなければ僕はカレーなど作っていなかったと思いますし、作っていてもこんなにも本気になっていなかったと思います。

スープカレーとの出会い

僕は北海道生まれ北海道育ち。大学時代は札幌の大学に通っていました。それは大学に入学して間もなくの事でした。今でも忘れない衝撃的な出会いでした。

「美味しいカレー屋さんがあるから行こう」と誘われて行ったのがスリランカカレーポレポレ
今は、スープカレーポレポレとして営業されているようでしたが、約20年前だったので、まだスープカレーという名前も無かった頃でした。なので、確か”スリランカカレー”が店名についていたはずです。

スープ状のスパイスが効いたカレーで、チキンレッグとジャガイモなどがワイルドに入っていて、まさに現在のスープカレーそのものでした。結構な辛さがあり、ヒーヒー言いながら食べたのを覚えています。僕は一発でこのスパイス感にハマってしまいました。

スープカレーを食べ歩く日々

ポレポレと出会った頃、札幌でもスープカレー屋さんが徐々に増えていきました。他のお店の味も知りたいと思い、毎週のようにスープカレーを食べ歩きました。

アジャンタ

今ではスープカレーのレジェンドとも呼ばれる名店、豊平区にあったアジャンタ、南郷7丁目のマジックスパイス、山鼻の名店こうひいはうすには何度も通いました。僕は大学2年生で既にスープカレー中毒に陥っていました。いや、周りの仲間たちも殆どがスープカレー中毒で、皆がこのスープカレーに魅了され、スープカレー人気は瞬く間に広がっていき、札幌にはどんどんスープカレー屋が増えていきました。

大都会「東京」でのカレー熱低下とBAR開業

大学を卒業し、就職で東京に出てきました。東京でもスープカレーが普通に食べれると思っていましたが、残念ながら東京のカレー事情は札幌とは全く別物でした。

東京にスープカレーが全然無い

カレー屋は山のようにあるのですが、ココ壱番屋のような一般的なカレー屋、欧風カレー、インドカレー、タイカレーが殆どで、スープカレーは数軒しか見つけられなかったのです。

とりあえず調べて見つけられたスープカレー屋に行ってみました。横浜のらっきょ、新橋のガネー舎、早稲田の『ベジーヤ(現在閉店)』、下北沢に進出した『マジックスパイス』、当時赤坂に出来たどのお店も美味しかったのですが、大都会東京でスープカレーが全然普及していない現状にとても残念な思いをしました。

この頃からたまに家でスープカレーを作るようになり「いつか自分でスープカレー屋をやりたいな」と考えるようにもなりました。

麻布十番にBARを開業

東京でのカレー熱が冷めてしまった僕は、カレー屋をやりたい夢を一旦置いておき、好きだった音楽とお酒を形にするため、麻布十番にBARを開業しました。BARの経営は予想以上に難しく、厳しいものでした。飲食業未経験の僕は、開業してから3年程死にそうに苦しい日々を送ることとなったのです。カレーの事など考える余裕もなく日々が過ぎ去っていきました

自分のカレーを追い求めて

BARの経営も4年程経ち経営も少し落ち着いてきて、スープカレー以外の東京で人気のカレーを色々と試し始めました。日本人の口に馴染みやすい欧風カレー、スパイシーなタイカレー、インドカレー、有名無名問わずいろいろ行きました。

スープカレーだけに捉われない広い視野

ある日、北海道のパキスタンカレーの有名店『カラバトカレー』の分店サリサリカレーが白楽にあると聞いて行ってみました。パキスタンカレーは、スープカレーとは真逆で水分は殆ど無くて、スパイス、玉ねぎ、鶏肉をじっくり煮込んだカレー。しかし、これがかなり中毒になる味でした。このカレーを食べた時、「スープカレーだけにこだわる必要は無いかも」と思うようになりました。むしろ、色々なカレーの良い部分を組み合わせてスープカレーに匹敵する、もしくはそれ以上に美味しいオリジナルのカレーを考えた方が面白いかもしれないと考え始めました。

研究、試作、改善の日々

カレーに対する方向性が見えてきて、一気にスイッチが入りました。スパイスを沢山買って、色々なカレーの本やネットの情報を頼りに試作をする日々が続きました。最初は市販のミックススパイスを使っていたのが自分でスパイスを調合し始めたり、玉ねぎを限界まで飴色に炒めたり、だんだん本格的になっていきました。自分の舌が覚えている理想的な味、スープカレーのようなスパイス感があって食欲をそそる香りと味わい。なかなか理想的な味になってくれず苦悩の日々が続きました。

胃もたれしないカレー

スパイスの香りと味の理想を求めつつも、もう一つ求めたかったのが「胃もたれしないカレー」でした。一般的なカレーや家庭用のカレールーには小麦粉や油が大量に入っているので食べた後の胃もたれが非常に不快です。折角自分のカレーを開発するからには、この点も解決したいと思ったのです。

小麦粉を使用しないのはまだ簡単なのですが、油を減らすのはとても難しかったです。なぜならスパイスは油と相性が良く、油によって香りが引き立てられるからです。なので、油をゼロにすることは出来ないのですが、必要最低限までカットすることにしました。

麻布十番薬膳カレーの完成

試作を繰り返してようやくお客様に提供できるカレーとして完成したのが鶏肉と生姜をたっぷり使ってじっくり水分が無くなるまで煮込んだ「鶏と生姜の煮込み薬膳カレー」でした。BARのメニューの一つに加えて提供を始めました。

お客様の評判も良く、リピートしてくださる方も多くいらっしゃいましたので、もっと多くの方に召し上がてほしいと思い、ランチ営業も始めました。

が、しかし生姜が強すぎて好まない方もちらほら。このままではダメだと思い、すぐさま2作目の開発に取り掛かりました。

完成したのが、豚挽肉をたっぷり使ったキーマカレーのような「豚挽肉と唐辛子の薬膳カレー」
豚肉の甘味、旨味とスパイス感がクセになる味わいです。唐辛子を多めにして少しパンチも出しました。

2作とも、煮込み系のカレーでしたので、今度はオーソドックスなとろみのあるカレーを開発しようということで、ベースのスープにクコの実、なつめ、ローリエ、にんにく、生姜を煮込んで作った「薬膳スープで作ったチキンカレー」を3作目としてリリースしました。

これで一旦カレーの開発は落ち着くかなと思ったのですが、自分自身が色々なカレーを食べ歩き、美味しいカレーに出会うと、「自分ももっと美味しいカレーを作りたい。」という欲が出てしまい、更に美味しいカレーを目指して研究を続けました。

そして辿り着いた現時点での集大成的なカレーとして完成したのが、「スリランカ風薬膳スープカレー」です。
これまでの3作では17種類のスパイスを使っていたのですが、更にスリランカカレー特有のスパイス・ハーブを2種類(カレーリーフ、パンダンリーフ)とナツメグを追加し、20種類のスパイス・ハーブで作る、最高の香りと味のカレーが完成しました。食欲を掻き立てる香り、口の中で広がる甘さ、コク、旨味、そして後から追いかけてくる辛さ。スパイスがしっかりと聞いてるので食べてる最中から体がポカポカと温まるカレーです。

美味しくて胃もたれしない健康的なカレーを研究し続けて、進化し続けてきた当店のカレーを是非一度ご賞味ください。